2013年11月26日火曜日

中国の高速鉄道が海外で人気、米カリフォルニアも導入検討:日本のリニアカーは?

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●19日、独経済紙は、中国の高速鉄道が海外で高い評価を受けており、米カリフォルニア高速鉄道は中国製鉄道車両の購入を検討していると伝えた。写真は中国の高速鉄道。

『 
レコードチャイナ 配信日時:2013年11月25日 7時30分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=79529&type=0

中国の高速鉄道が海外で人気、米カリフォルニアも導入検討―独紙

 2013年11月19日、独経済紙・ハンデルスブラットは、中国の高速鉄道が海外で高い評価を受けており、米カリフォルニア高速鉄道は中国製高速鉄道の導入を検討していると伝えた。
 23日付の参考消息網の報道。

 過去10年間、中国はドイツのインターシティ・エクスプレス(ICE)や日本の新幹線、フランスのTGVなどの技術を学び、国産高速鉄道の開発に力を入れてきた。
 その結果、中国の高速鉄道は国内の多様な気象条件下でも走行可能に。
 また、中国はわずか数年で9700キロメートルに及ぶ線路を建設。
 20年には数万キロメートルにも達する見込みだ。

 高速鉄道を供給している中国鉄路は自社製品に大きな自信を抱いている。
 「中国高速鉄道はすべてを単独供給できるが、他国は異なる企業が技術を寄せ集めなくてはならない」
と専門家は指摘する。
 また、中国高速鉄道は低価格だ。
 新華社報道によると、一般に高速鉄道1キロメートルあたりの価格は5000万ドル(約50億円)ほどだが、中国の高速鉄道は3300万ドル(約33億円)ですむ。

 対外的な開放政策を打ち出したばかりのミャンマーも、中国との高速鉄道プロジェクトに意欲を見せている。
 このプロジェクトが締結されれば、中国は鉄道の建設以外に、運営により50年間にわたって利益を得ることができる。

 また、米カリフォルニア州も高速鉄道の建設に中国からの資金を獲得したいと考えているようだ。
 同州のジェリー・ブラウン知事は、13年春に中国を訪問した際、北京で高速鉄道「和諧号」に試乗し、非常に感激していたという。
 ただしカリフォルニア州が高速鉄道の線路と駅を建設するためには、500億ドル(約5兆円)の資本が不足している。
 ブラウン知事は中国政府系ファンドや投資家の協力を求めたいもようだ。



「中国網日本語版(チャイナネット)」2013年11月25日
http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2013-11/25/content_30696864.htm

 日本が米国でのリニア建設を計画


●日本のリニアモーターカー(資料写真)

①:コスト考慮し決断渋る米国

 日本は自国の先進的な技術を再度証明し、新市場を開拓するために、リニアモーターカー技術の輸出を急いでいる。
 ワシントンとニューヨークを結ぶリニアモーターカーの建設に対して、日本は一部の資金援助を約束した。
 しかしコストが高額であることから、債務危機に陥っている米国政府が同プロジェクトを批准する可能性は低い。
 米メディアが19日に伝えた。

 世界最速の列車が日本中部の山間部を通過した際に、身長が約2メートルに達する元ニューヨーク州知事のジョージ・パタキ氏は車内の通路で座席をつかんでいた両手を離し、列車の安定運行に感嘆を漏らした。

 パタキ氏は、
 「地下鉄では吊り革を持たなければならない。
 素晴らしい、
 これこそが未来だ」
と語った。
 その時、列車の速度メーターは時速314マイル(約505キロ)を指していた。
 円形の車窓の外で、富士山の景色があっという間に過ぎ去った。

 パタキ氏と引退した米国の政治関係者および官僚が16日(土)に訪日し、リニアモーターカーに試乗した。
 同列車は超電導リニア技術を採用しており、速度はアムトラックが運営する米国最速のアセラ・エクスプレスの最高時速150マイルの2倍以上に達する。
 彼らは同技術を米国に導入し、ニューヨーク―ワシントン間の走行時間を縮小し、現地の交通渋滞を緩和しようとしている。

 交渉成立を促すため、日本側は一部の建設費用の負担を表明している。
 同費用は、数十億ドルに達すると見られている。

 1964年に初の新幹線を開通させてから、日本は高速鉄道の急先鋒となった。
 日本の新幹線は来年、開通から半世紀を迎える。
 日本は初となる都市間リニアモーターカー(東京―名古屋―大阪)の全面的な建設の計画を始めている。
 同リニアモーターカーは、日本が自国の技術リーダーとしての地位を再び示す手段となる。

 海外の模範プロジェクトにも同様の効果がある。
 これはパタキ氏とその他の要人が土曜日に同列車に乗車した理由だ。
 乗客には他にも、トム・ダシュル前合衆国上院院内総務、エドワード・G・ランデル前州知事、メアリー・ピータース前運輸長官がいた。

 今回の訪日に参加できなかった要人には、クリスティーン・トッド・ウィットマン元州知事らが含まれる。
 これらの要人は、Northeast MAGLEV社の顧問委員会のメンバーだ。
 本社をワシントンに置くこの民間企業は、日本の同技術を利用し、ワシントンとニューヨークを結ぶ線路の建設を目指している。

 同計画の提唱者は、
 「走行時間を短くすることで米北東部の従業員の生産効率を高め、混雑する空港とパンク寸前の高速道路の圧力を軽減できる」
と指摘した。

 米北東部では、ワシントンとニューヨークを結ぶ線路の改良を目的とする提案が出されており、一部の計画にはボストンも含まれる。
 リニアモーターカーは、最近の提案の一つに過ぎない。
 しかしこれらの計画が実行に移される望みは薄い。

 米国政府は、増え続ける債務への対応に力を入れており、コストの高い鉄道事業が認可されるのは難しい。
 カリフォルニア州が計画中の高速鉄道への投資は何度も延期され、その路線も論争を引き起こした。
 イギリスでは、ロンドンから北に向かう高速鉄道の建設計画をめぐり、抗議者が政府と対立している。

②:リニアはホラー映画にしかないと思う米国人

 さらに、民衆はリニアの技術を完全に信用していない可能性もある。
 「米国人はリニアはホラー映画にしかないと思っている」
と、レンデル氏は話す。

 実際、日本のリニア技術では、時速90マイルで飛行機のタイヤと同様にゴムに包まれた車輪がコンクリートのレールを離れ、宙に浮くことができる。
 従来の高速列車の鉄の車輪は特殊設計されたレール上を走行しなければならないが、リニアはU字型のレールから4インチ浮き、超伝導電磁石によって浮いたまま走行できる。

 米国の鉄道を建設するため、日本は融資面でも突飛的な提案をした。
 今年の冬、日本の安倍晋三首相はオバマ米大統領と会談した際、ワシントンとボルチモアをつなぐ鉄道の第1期工事にリニアのレールと推進システムを無償で提供するという積極的な姿勢を示した。

 JR東海の葛西敬之会長は、
 「米国とこの技術を共有したい。米国は私たちに欠かせない盟友である」
と述べた。
 同社はリニア実験線を管理しており、東京・大阪間の鉄道建設を進めている。

 日本の官僚はまだ支援額を明かしておらず、「建設費の約半分」とだけ述べた。
 東京・大阪間のリニアのコスト1マイルあたり3億米ドル超(1キロ約11億4000万元)で計算すると、日本が提供する資金は約50億ドルになる。

 同プロジェクトを進めるTNEM(The Northeast Maglev)社は、個人投資家と公的資源から残りの資金を調達したい考えである。
 同社は2010年に創設されたが、最近になってワシントンでロビー活動を強化し始めた。
 法律事務所DLAパイパーで政策顧問を務めるレンデル氏はこの活動の中心人物である。

 安倍首相がリニアの新市場開拓を急ぐのは、日本が新幹線車両の輸出においてそれほど成功していないためである。
 韓国やサウジアラビアなどの一部の国は欧州のシステムに切り替えた。

③:巨大な利益にかかわる

 安倍首相は今年9月、ニューヨーク証券取引所で演説した際、「まさに夢の技術」と発言した。

 しかし、この技術は日本にしかない。
 ドイツの磁気浮上式高速鉄道「トランスラピッド」は2006年、実験線で衝突事故を起こし、多くの死者を出した。
 その後、ドイツは徐々にリニアを支持しなくなった。

 日本でも、計画中の東京・大阪間のリニアは大きな問題に差しかかっている。
 その原因の一つは、スピードと同様に驚くほどコストが高いことである。
 コストは約1000億米ドルだ。

 もう一つ、地理的な問題もある。新幹線の東京-名古屋-大阪のレールは多くが海岸沿いにあり、平らな人口密集地を通るが、リニアはアルプス山脈などの国内で最も険しい地帯を通る。

 レールの約86%が山を抜けたり越えたりしなければならない設計となっているため、建設工事を大幅に妨げ、コストを高め、地震活動に対する懸念も強めた。
 ここは地球上で地震活動が最も活発な地域の一つであるためである。

 様々な理由により、東京・名古屋間は2027年に完成し、名古屋・大阪間は2045年までかかる見通しだ。

 JR東海は、移動時間を短縮でき、航空会社から客を獲得することができるため、同プロジェクトは新たなニーズを生み、途中の停車駅にも貢献すると主張している。
 1987年、日本は国鉄を民営化し、JR東海が誕生した。
 同社は、新幹線で得た利益などのキャッシュフローで工事に投資すると発表している。

 そのため、日本が米国を説得して東北を走るリニアを建設できるかは巨大な利益に関わってくる。

 JR東海の葛西会長は山梨県立リニア見学センターで取材に応じ、
 「過去、米国は交通技術でトップを行っていたが、現在の交通インフラはあまりよくない。
 米国と日本はなぜ共同で世界を引っぱらないのか」
と述べた。



2013年11月25日月曜日

ロケットの概念変えた「イプシロンの人工知能」 13年の注目技術1位

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新型ロケット「イプシロン」打ち上げ成功。搭載した惑星観測衛星を予定の軌道に乗せた(9月14日)


日本経済新聞 2013/11/25 7:00
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1901S_Z11C13A1000000/

 ロケットの概念変えた「イプシロンの人工知能」 13年の注目技術1位

    光陰矢のごとし――。2013年も残すところわずか1カ月強となったが、今年、社会に大きなインパクトをもたらした技術は何か。
 IT(情報技術)や医療、建設、電気・機械の分野を対象にした雑誌を発行する日経BP社では、専門記者200人が今年注目された300以上の技術を挙げ、その中から4人の審査員[注]がベストテンを選出した。
 2013年のランキング1位には、純国産ロケットの「イプシロンロケットの人工知能」が選ばれた。
 2位には、前走車と衝突の危険性が高まると自動でブレーキをかける自動ブレーキを低価格化した技術が、3位には、予報もなくいきなり発生するゲリラ豪雨を予測する技術が入った。
 本連載では、ベストテンに選ばれた技術をランキング1位から順に振り返っていく。
   
1位:イプシロンの人工知能
2位:自動ブレーキ技術
3位:ゲリラ雷雨予測技術
4位:静かに消すビル解体技術
5位:ロボットスーツ(HAL)
6位:3Dプリンター
7位:直下地下切り替え工法
8位:遠隔がれき撤去技術
9位:IGZO(イグゾー)
10位:Hadoop(ハドゥープ)


[左]写真1 打ち上げ直後のイプシロンロケット
[右]写真2 打ち上げられたイプシロンロケット(写真:いずれもJAXA)

■ロケットの打ち上げを日常的なものに

 イプシロンの狙いは「ロケットの打ち上げをもっと簡単で日常的なものにすること」(森田泰弘プロジェクトマネージャ)である。
 このため、コストダウンや組み立ての簡素化、準備時間の短縮などが図られている。

 打ち上げコストは初号機で50億円程度、2号機以降では38億円で済むという。
 2017年に打ち上げる次期イプシロンでは30億円以下に引き下げる
 これに対し、液体燃料を使う大型ロケット「H2A」の場合、打ち上げに100億円近くかかっていた。

 発射台にロケットを設置してから打ち上げ、後片付けまでの期間はイプシロンの場合、7日であった。
 これに対し、イプシロンより1世代前の小型ロケット「M-V」では42日間かかっていた。

 低コストかつ短時間で打ち上げを成功させる肝となるのが、
 打ち上げ前の点検を自動化する打ち上げ管制システムだ。
 人工知能(AI)機能を組み込んだ、「ROSE(ローズ)」という愛称を持つコンピューターをイプシロンに取り付け、ROSEが電気機器の状況を監視し、地上側のパソコンに伝達するようにした(写真3)。


 何らかの異常を検出した際には、システムが即座に打ち上げを中止する。
 こうした仕組みにより、人為ミスの排除による信頼性向上、点検時間の短縮、管制要員の削減などを実現した。
 2台のノートパソコンだけで打ち上げ管制ができるため、管制室内の要員はM-Vの10分の1で済んだ(写真4)。


■イプシロンと管制システムの可能性

 ただし、今回の初号機の打ち上げでは、点検作業を自動化したがゆえのトラブルに見舞われた。8月27日、発射19秒前に打ち上げを中止したのは打ち上げ管制システムのトラブルが原因だった。

 イプシロンロケットの姿勢を点検した際、イプシロン側のコンピューターからデータが送られてくるよりも、わずかに早く地上側のコンピューターが姿勢チェックの処理をしてしまった。
 その差は0.07秒であったが、地上側のコンピューターは異常を検知したと誤認し、打ち上げを自動停止した。

 しかし、最終的に打ち上げに成功したことで、イプシロンロケットと打ち上げ管制システムの双方について将来の可能性が広がった。

■新興国に採用を働きかけ

 東南アジアを中心に新興国で小型衛星の打ち上げニーズが高まっている。
 日本としては今後、今回の実績をアピールし、新興国にイプシロンの採用を働きかける。

 打ち上げ管制システムはイプシロンだけではなく、将来は再利用可能なシャトルの打ち上げにも活用される。 
 その意味で、イプシロンロケットとその管制システムは日本の宇宙開発のエポックメイキングになる技術である。



NHKニュース 12月25日 4時27分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131225/k10014085401000.html



H3ロケット 2020年に打ち上げ目指す

 日本の基幹ロケット「H2A」に代わる次世代のロケット、「H3」の開発が来年度から始められることになり、文部科学省は、2020年の1号機打ち上げを目指しています。

 12年前に開発された日本の基幹ロケット「H2A」は、これまでに22機が打ち上げられ、成功率は95%を超えていますが、海外の衛星を受注するためにはおよそ100億円というコストの高さが課題でした。

 こうしたことを受け、文部科学省は次世代の基幹ロケット、「H3」を開発することを決め、来年度予算案に70億円を盛り込みました。
 「H3」は、液体燃料を使ったメインエンジンに固体燃料の補助ロケットを組み合わせて飛ばす大型のロケットで、開発費はおよそ1900億円が見込まれています。
 ことし打ち上げに成功したイプシロンの点検技術などを活用することで、打ち上げコストは、H2Aのおよそ半分の50億円から65億円に抑えることを目標としています。
 また、衛星の重さによって打ち上げの能力を変えられるようにし、2トンから6.5トンの衛星をカバーする計画です。
 
 文部科学省は来年度、このH3の開発に着手したあと、
 7年後の2020年に1号機を打ち上げたい、
としています。

2013年11月24日日曜日

「新島」誕生 小笠原村、村民の意見集約し議会で島名決定へ:

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小笠原の新しい島、誕生の噴煙 高さ300mに

 公開日: 2013/11/20
海底火山の噴火で新しい島ができた小笠原諸島の西之島付近を11月21日午前、朝日新­聞社機で上空から見た。


小笠原に新たな島・・・命名誰が 領海は?きょうも噴火(13/11/21)

公開日: 2013/11/21
小笠原諸島で海底火山が噴火し、新しい島が出現しました。 新たな島は、東京から南に約1000キロ離れた西之島の南南東500メートル付近で見­つかりました。島誕生のメカニズムです。西之島は、海底から4000メートルほどもあ­る海底火山の山頂にあたります。


「新島」誕生 小笠原村、村民の意見集約し議会で島名決定へ(13/11/

公開日: 2013/11/21
小笠原諸島・西之島近くで、新しい島が誕生する可能性があることを受けて、小笠原村で­は、新しい島の観光の目玉になることを期待して、村民の意見を集約したうえで、議会で­島の名前を決めることにしている。



CNN ニュース 2013.11.23 Sat posted at 15:01 JST
http://www.cnn.co.jp/world/35040388.html?tag=cbox;world

小笠原に新たな島誕生、海底火山の噴火で

 日本の気象庁などは23日までに、小笠原諸島の西之島近くで海底火山の噴火により新たな島が出現したと発表した。
 この島の長さは約200メートルで、幅は約50メートル。

 噴火活動の開始は今月20日ごろ。
 ビデオ映像によると、島からは白煙があがり、時々は黒い噴煙が起きている。

 火山活動が止まれば、島が海中に没する可能性もあるが、活動が続いた場合、島がさらに大きくなり領海が広がる事態も考えられる。
 米ハワイ大学の海底火山問題の学者は島の将来については波の浸食の程度に大きく左右されるとの見方を示した。

 気象庁は新たな島の周辺海域を通る船舶などに注意を呼び掛けた。

 海底火山の活動に伴う新たな島の出現は2009年、南太平洋の島国トンガ近くでも発生。
 またアイスランド沖では1963年、スルツェイ島が新たに生まれていた。




【気になる-Ⅴ】


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2013年11月23日土曜日

貧困国支援に動く日本の医薬品会社汝与えよ、さらば与えられん



JB Press 2013.11.23(土)  The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39258

貧困国支援に動く日本の医薬品会社汝与えよ、さらば与えられん
(英エコノミスト誌 2013年11月16日号)

 日本の製薬会社が貧しい人たちの病気を治すことに投資する。

 日本の製薬会社は独創性に溢れた集団だ。
 2005年から2008年にかけて、日本より多くの新薬を開発したのは、米国と英国の製薬業界だけだった。
 だが、貧しい人たちの病気を治すことにかけては、日本企業の実績はそれほど良くない。

 非営利団体(NPO)のアクセス・トゥー・メディスン・ファウンデーションは、発展途上国の患者のために尽くす製薬会社の努力を追跡している。
 製薬大手20社のランキングでは、最下位6社のうち4社を日本企業が占めている。

 そうした状況が変わるかもしれない。
 11月8日、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT)はマラリアと結核とシャーガス病(不気味で人の血を吸うサシガメを介して広まる病気で、死に至る可能性があり、多くの場合、衰弱をもたらす)の治療を促進させるための初の助成金交付を発表した。
 今年設立されたGHITは官民パートナーシップで、アステラス製薬、第一三共、エーザイ、塩野義製薬、武田薬品工業という日本の製薬会社5社が参加している。

 低所得国の医薬品へのアクセスを制限しているという製薬会社に対する批判は千年紀の変わり目にピークに達した。
 人の命を救うHIV治療薬のメーカー数社が、アフリカの患者に手頃な価格で薬を提供することを拒んだことがきっかけだった。
 その結果生じた激しい憤りを受け、製薬会社は方針の見直しを余儀なくされた。
 現在、大半の大手医薬品メーカーは自社を、ともに伝染病と戦う盟友として売り込んでいる。

■GHITが試みる新たなモデル

 それは時として、薬を寄付したり、ジェネリック医薬品のメーカーへの技術ライセンスの供与を意味する。
 また、それ以外のケースでは、新たなワクチンや治療の共同開発を意味する。

 例えば、アクセス・トゥー・メディスン・ファウンデーションの指標で1位にランクされている英グラクソ・スミスクライン(GSK)は来年、規制機関にマラリアのワクチンの認可を求める。
 ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団(同財団はGHITファンドのパートナーでもある)がこの新薬の開発に資金を提供した。

 GHITファンドでは、日本企業5社は少々異なるモデルを試している。
 各社は5年にわたってそれぞれ年間100万ドルを拠出する。
 ゲイツ財団と日本政府からの投資と合わせると、ファンドは1億ドルを超える。

 この資金は、日本と外国の機関のパートナーシップに分配される。
 例えば、大阪大学とウガンダのグル大学の研究員たちは、提案されている別のマラリアワクチンの有効性を高めるために73万5000ドルを受け取る。

 同じようなすべての試みと同様、GHITにとって重要な問題は、新しく作られた薬がいくらになるか、だ。
 GSKは製造原価に5%を上乗せした金額でマラリアワクチンを販売する予定で、その利益は伝染病の研究に当てられるという。

 それでも、一部の提唱者はまだ価格が高すぎるのではないかと心配している。
 元エーザイ幹部で、現在GHITファンドを率いるB・T・スリングスビー氏は、同ファンドの研究プログラムで開発された医薬品は、最貧困国ではロイヤルティなしでライセンス供与されると話している。
 その他の市場では、概ね収支トントンを目指すという。

■いまの援助が将来の利益に

 しかし、これらの企業の善行は長期的な見返りを得られるかもしれない。
 日本勢はしばらく前から、海外で存在感を高めようとしてきた。
 武田薬品は2011年にスイスの医薬品メーカー、ナイコメッドを約140億ドルで買収した。
 2008年には第一三共が50億ドル近く投じ、インドの薬品メーカーのランバクシーを買収したが、ランバクシーはその後、安全性の問題に苦しめられている。

 それと比べると、GHITファンドはずっと小規模で、物議を醸す可能性の低い投資となる。
 だが、日本企業が米国や欧州の一流研究機関と関係を構築し、ゆくゆくは日本の医薬品ブランドを新興国市場の患者と保健省に広めることに役立つだろう。
 いまの援助は将来の利益につながるかもしれないのだ。

© 2013 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。




【気になる-Ⅴ】


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2013年11月21日木曜日

世界が日本流の長期停滞に入る恐れ:世界的な貯蓄過剰という問題

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JB Press 2013.11.21(木)  Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/39234

世界が日本流の長期停滞に入る恐れ
(2013年11月20日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 米国のローレンス・サマーズ元財務長官が、楽観論者の残党に大量の冷や水を浴びせかけた。
 先日開催された国際通貨基金(IMF)の年次調査会議にパネリストとして参加したサマーズ氏は、高所得国の経済が世界金融危機以前の通常の状態に戻ることは容易ではないかもしれないと述べたうえで、需要の慢性的な低迷と遅い経済成長という、不安を抱かせる将来像を描いてみせたのだ。

 いわゆる「長期停滞」に陥る可能性を指摘したのはサマーズ氏が初めてではない。
 思慮深いアナリストたちは金融危機以来ずっと、日本の「失われた10年」の二の舞いになるのではという恐怖を感じてきた。
 しかし、サマーズ氏の説明は実に華麗で、見事だった。

■長期停滞を恐れる理由:西方諸国に見られる3つの特徴

 同氏の説明を信じる理由は何か? 
 これについては、西側諸国に見られる3つの特徴を指摘することができる。

①.第1に、2007~08年の世界金融危機からの回復は明らかに弱々しい。
 米国の第3四半期現在の経済規模は危機前のピーク(もう5年以上前の話)を5.5%上回るにすぎない。
 また実質ベースで見た米国の国内総生産(GDP)は危機前のトレンドに対して後れを取っており、両者の差は拡大し続けている。

 しかも、超緩和的な金融政策が取られているにもかかわらず、このGDPの伸び悩みは長期に及んでいる。

②.第2に、金融危機で打撃を受けた国々は、危機の前には住宅価格の急上昇とともにレバレッジの急拡大を(特に金融部門と家計部門で)経験していた。
 いわゆる「バブル経済」である。
 また多くの国々(とりわけ米国と英国)の政府は拡張的な財政政策も取っていた。

 それにもかかわらず、行き過ぎを示唆する明らかな兆候――特にトレンドを上回る経済成長やインフレ率――は英国でも米国でも危機がやって来る前には一切見られなかった。

③.第3に、危機前の数年間には、世界経済が力強い成長を遂げていたにもかかわらず、長期の実質金利が著しく低い水準で推移していた。
 英国では長期の物価指数連動国債の利回りが、アジア金融危機の後に4%近い水準から2%前後に低下していた。
 世界金融危機の後にはマイナス圏に突入している。
 米国の物価連動国債(TIPS)の利回りも、少し後れながら同様な動きを見せていた。

 従って、金融システムの健全性をある程度回復させたり、危機前に積み上がった過大な債務負担を軽減したりするだけでは、完全な景気回復は実現しそうにない。
 
 なぜか? 

 それは、世界金融危機の前に見られた金融の行き過ぎが以前からの構造的な弱さを覆い隠していたから、あるいは筆者が論じてきたように、この行き過ぎ自体がそうした弱さに対応して生じたものであったからだ。

■世界的な貯蓄過剰という問題

 そうした弱さの1つに「世界的な貯蓄過剰」がある。
 これは「投資不足」と言い換えてもよい。
 低い実質金利がその何よりの証拠だ。
 生産的な投資を探し求めている貯蓄の方が、その貯蓄を利用する生産的な投資よりも多かったということだ。

 貯蓄過剰のしるしは「グローバルインバランス(世界的な経常収支不均衡)」にも表れていた。
1).東アジアの新興国(とりわけ中国)、
2).石油輸出国
3).およびいくつかの高所得国(とりわけドイツ)
による巨額の経常収支黒字(資本の純輸出)のことだ。

 これらの国々は、世界のほかの国々に差し引きでプラスの貯蓄を供給することになった。
 金融危機前はそうだったし、今日でもこの構図は変わっていない。

 世界金融危機が起きる前は、世界の過剰な貯蓄の大部分を米国が吸収していたが、生産的な投資に使われたわけではなかった。
 低利の資金を容易に借りられたにもかかわらず、米国の設備投資のGDP比は2000年以降低下した。
 この低下の理由の1つは、投資財の相対価格が下落したことにあった。
 実質ベースで見た設備投資のGDP比は安定していたが、名目ベースで見た比率は低下しているのだ。

 また、2000年直前の株式バブルの時を除けば、企業は設備投資の資金を自らの貯蓄から捻出しており、外部から調達する必要がなかった。

 そのため、米国に輸入される貯蓄は、家計部門と政府部門の借入という形で使われた。
 ところが、所得格差が拡大したことにより、家計部門の借入超過(つまり、貯蓄よりも借入の方が多い状態)に頼ることはさらに難しくなった。

 ほかの条件が同じであれば、この状況では家計部門の貯蓄は増えるはずだ。
 お金持ちは支出以上の所得を得ることが多く、さらにお金持ちになるにつれてさらに貯蓄をすることが多いからだ。

 この問題に対する(一時的な)解決策は、お金持ちでない人をそそのかして返済能力を超えた借金をさせ、支出を続けられるようにすることだった。
 しかし、2007~08年の金融危機でこの手法は破綻した。

 要するに、世界経済は、たとえ金利が極めて低くても企業が使いたいと思う以上の貯蓄を生み出してきたわけだ。
 これは米国だけでなく、大半の主要高所得国に当てはまる。

 こうして過剰貯蓄は足元の需要の制約になった。
 だが、これは投資の鈍さと関係していることから、将来の供給の伸びが鈍いことも意味している。
 この問題は危機以前から存在していたが、危機で一段と悪化した。

■長期停滞を回避するためになすべきこと

 では、何をすべきなのか? 
 投資に対する望ましい貯蓄の過多に対する1つの対応は、実質金利のマイナス幅を大きくすることだ。
 一部のエコノミストがインフレ率を引き上げるべきだと主張しているのは、このためだ。
 だが、それはたとえ政治的に容認できたとしても、達成するのが難しい。

 アンドリュー・スミザーズ氏が著作『The Road to Recovery(回復への道)』で強調したもう1つの可能性は、企業投資を妨げる障害に真正面から取り組むことだ。
 同氏が挙げる一番の元凶は、経営陣を生産的な投資を増やすよりも自社株買いを通じて株価を操作するよう促す「ボーナス文化」だ

 スミザーズ氏が考察し、多くのエコノミスト(筆者自身も含む)が支持する、また別の可能性は、今日の過剰貯蓄を資金源として利用して、公共投資を大幅に拡大させることだ。
 これは部分的に低炭素成長へのシフトと結びつけられるかもしれない。

 もう1つの可能性は、絶好の投資機会が存在するに違いない新興国・発展途上国への資本移動を促進することだ。
 これだけ膨大な世界の貯蓄が、一見したところ投資機会が存在しない場所にチャンスを求め、投資機会が存在すると期待される場所を避けることは意味をなさない。

 高所得国にただの金融危機以上のことが起きたという根本的な主張には説得力がある。
 また、こうした国での設備投資の急増がどうにかして世界の過剰貯蓄を吸収するとは考えにくい。
 結局のところ、人口が高齢化し、賃金が高く、経済が停滞している国々で、そんなことが起きると考える理由などあるだろうか? 

 危機が高所得国にもたらしたダメージは大きいが、これらの国はそれよりずっと大きな問題に直面する。
 かなり長期にわたり弱い需要と貧弱な供給が続く未来に向かうかもしれないのだ。

 つまり、最善の対応は、生産的な民間投資および公共投資を増やすことを目指した策だということになる。
 そう、確かにミスは起きるだろう。
 しかし、貧しい未来のコストを受け入れるよりは、ミスを犯すリスクを取った方がいい。

By Martin Wolf
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