●ジブリの「天空の城ラピュタ」の一場面
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ウオールストリートジャーナル 2013年 8月 02日 10:32 JST 更新
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323451804578642561445230042.html
By TAKASHI MOCHIZUKI AND KANA INAGAKI
日本の株・外為投資家が身構える「ジブリの呪い」
【東京】スタジオ・ジブリという名を耳にすれば、大抵の日本人は「千と千尋の神隠し」や「となりのトトロ」といったヒット作を次々に生み出してきたアニメ制作会社を思い浮かべるだろう。
だが、株式と為替のトレーダーはそれとは別に陰鬱(いんうつ)なイメージも連想するはずだ。
日本テレビ系列で毎週金曜夜9時から放送される映画番組「金曜ロードShow!」では、数週間に1度ジブリのアニメ作品が放映されるが、ベテラン市場関係者によると、
放映後の東京市場で株・為替市場が大荒れになるという。
特に、円相場のアナリストはジブリのアニメが放映される2日について、最悪の事態が起きると予想している。
7月の米雇用統計がほぼ同じ時間帯に発表されるからだ。
ジブリの「天空の城ラピュタ」の放映開始は日本時間2日午後9時(米東部午前8時)で、雇用統計はそれから30分後に発表される予定。
ところがジブリ作品の放映と重なった9回の雇用統計の発表のうち8回が市場予測を下回った。
そして7回で、ドルは円に対して下落したのだ。
例えば、「魔女の宅急便」が放映された2011年7月8日の金曜日。
予想を86%下回る雇用統計が発表され、ドルが円に対して1.2%下落した。
さらに週明けの月曜日には、日経平均が前週末比0.7%安となった。
●玩具店の棚に置かれたトトロのぬいぐるみ
「ジブリが金曜にやる、それはつまりドル円相場が荒れるという認識はファクターとして持っている」
と話すのは、都内の仏系保険会社に勤務する中村維男(ゆきお)さん。
趣味で外国為替取引を手掛ける小口投資家の1人で、
「ジブリ映画の放映自体は特に見ないが、リスクヘッジという観点で、放映されるスケジュールは常にチェックしている」
という。
ジブリのアニメがテレビ放映されると株や為替相場が荒れるという都市伝説は、トレーダーの間では「ジブリの法則」あるいは「ジブリの呪い」と呼ばれている。
日テレの「天空の城ラピュタ」放映を目前に控えて、ネット上の掲示板やツイッターなどは既に、この話題についての投稿で盛り上がっているようだ。
中には、日テレは放映日と米雇用統計日が同じ日になるように放映スケジュールを仕組んでいるのではないかといった陰謀説を唱える向きもある。
日テレの広報担当者にコメントを求めたが、コメントに値しないと言われてしまった。
また、スタジオ・ジブリも、市場でそのようなうわさが広がっていることには気付いているとしながらも、やはりコメントを控えた。
ジブリの法則を信じている人々は、異様ともいえる的中度を指摘する。
日テレは2010年1月以来、ジブリ作品を24回放映してきた。
そして、3分の2近くで、放映後の最初の取引日には東京市場で円高が起こり、また約半数の場合で株価が下落した。
日本市場ウォッチャーはなぜそのようなことが起こるかについて、それぞれ持論を展開している。
商品取引情報会社の大起産業で商品アナリストをしている小菅努氏もジブリの法則を独自に分析した一人。
雇用統計の発表で不安定さが増すのは確かだが、ジブリ放映日後の数日の為替レートの振れは放映のなかった場合と比べて、著しく大きいというほどでもないという。
ただ、ジブリ放映日が雇用統計発表と重なることがよくあるため、熱狂的なアニメ・ファンの多い日本では、「心理的に」両方を結び付けて考えてしまう傾向があると指摘する。
実際、このように相場と相関性のある要因を示した話は世界中の市場のどこにでもある。
その中でも最も有名なのは太陰周期に基づいた古い相場格言だ。
それによると、満月になる前後の数日に相場の方向性が変わることが多いという。
また、トレーダーは1世紀以上にわたり、太陽とその黒点の活動を観察し、相場の転換点の測定に活用していた。
日本にも変わった説がある。
市場のブロガーは、バレンタインデーには必ずと言っていいほど日経平均株価が上昇すると指摘する。
もちろん、ジブリの法則に影響を受けていると公然と認めるプロのディーラーには、ほとんどお目にかからない。
ただし、日本の大手銀行に勤務するあるシニア・ディーラーは、同業他社の中には法則に従って「宝くじの感覚で」個人的な投資をしている者もいると、こっそりと打ち明けた。
一方、小口のデイトレーダーや気軽に為替取引を楽しんでいる個人投資家には、法則を信じ、大損を避けるためにポジションを閉じると話す人もいた。
東京に住むある主婦は「時々はこういうネタで取引するのは楽しい」と、ジブリ作品が放映される時だけは、米雇用統計が予想を下回ると読んで為替投資をする。
そして、5度のうち4度は儲けが出たという。
また、大阪を拠点としているあるデイトレーダーは、ジブリの法則のことは2006年に株関係のネット掲示版で初めて知ったと話す。
当時、「天空の城ラピュタ」放映中に「バルス」という滅びの呪文が叫ばれた時には「戦慄が走った」という。
そして、
「もしあの時にポジションを閉じていなかったら数百万円単位のロスを出していた。
翌週火曜日に再エントリーしたが、そのポジションは結局数百万の儲けを出した。
10人ほど投資仲間がいるが、ラピュタの恐ろしさを話題にしたのをよく覚えている」
と真顔で語った。
米雇用統計発表と同じ日に「金曜ロードShow!」で「天空の城ラピュタ」が放映されるのは十数年ぶり。
日本のデイトレーダーは万全の構えで放送を待っている。
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ウオールストリートジャーナル 2013/08/05 3:52 pm
http://realtime.wsj.com/japan/2013/08/05/%E3%80%8C%E3%82%B8%E3%83%96%E3%83%AA%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87%E3%80%8D%E5%86%8D%E3%81%B3%E7%9A%84%E4%B8%AD%E3%80%81%E3%80%8C%E3%83%90%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%80%8D%E3%83%84%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%88/?mod=WSJBlog&mod=WSJJP_Blog
「ジブリの法則」再び的中、「バルス」ツイートも新記録
2日に発表された7月の米雇用統計で非農業部門就労者数が予想より弱かったことで、
東京のトレーダーたちは再び「ジブリの法則」に直面させられた。
「呪い」と呼ばれることもあるこの法則によると、スタジオジブリの映画が日本テレビ系列で放映されている時間に米国の雇用統計が発表されると結果は市場予想を下回るという。
まさに2日に起こったのがこれだ。
ジブリの「天空の城ラピュタ」が放映されている際に発表された7月の米雇用統計は、非農業部門就労者数が前月比16万2000人の増加にとどまり、アナリストによる事前予想の18万3000人増を大きく下回った。
さらに悪いことに、米労働省は5、6月の就労者数を計2万6000人下方修正した。
「ジブリの法則」はここ数年、少なくとも米雇用統計の弱さを示す予言者として、不気味なほどその正しさが証明されている。
2010年以降、雇用統計の発表と放映が重なったのは10回で、そのうち9回で統計は予想より弱い結果を示した。
2010年以降発表された44回の雇用統計のうち、市場予想を下回ったのは全部で26回。
例外の1回は今年7月。
2010年から2012年まで毎年7月、雇用統計はジブリと重なり、結果はいずれも弱かった。
ゆえに、日本市場のウォッチャーは8月もジブリの法則があてはまらないだろうと予測していた。
クレディ・アグリコル銀行の斎藤 裕司外国為替部ディレクターは
「先週、雇用統計までの数字が良かったので、雇用統計に対するマーケットの期待値は高く、一部では20万人以上を見込んでいる向きもあった」
と述べた上で、
「全く科学的でないのはみんな知っているが、冗談半分でジブリの法則あたったね、とは話していた」
と明かした。
反応が早かったのは外国為替市場だった。
ドル相場は対円で雇用統計発表前に1ドル=100円にじりじりと近づいていたが、発表後に急落し、1ドル=99円を下回る水準まで値を下げた。
一方、米株式相場は前日終値を上回って引けた。
JRTは、先週のウォール・ストリート・ジャーナルの取材で、テレビをつけながらジブリの法則に従って取引をすると話した東京のフランス系保険会社に勤務する中村維男(ゆきお)さんに話を聞いた。
中村さんは、統計発表前に50万ドル(約4900万円)を対円で売った。
仮に法則が正しければ、雇用統計は悪く、ドルは下落するはずだからだ。
結果、中村さんは25万円の利益を手にした。
中村さんは
「ロジカルでないのは知っているが、ここまで歪みのあるアノマリーは実に興味深い」
と話す。
いくらか為替取引をしている主婦の浅野素子さん(39)は数週間前にジブリの法則を耳にし、この法則に賭けた。
浅野さんはJRTに対し
「ジブリに乗ったというのも少しある。
知っちゃったからには完全に無視できない」
と語り、取引で4万円を手にしたと付け加えた。
2日のジブリ映画はもう1つの意味でも注目に値するものだった。
ミニブログサイト「ツイッター」を介したファンの参加が記録的なものになったのだ。
「天空の城ラピュタ」には特に熱狂的なファンがいる。
こういったファンは、ヒーローとヒロインが映画で「バルス」という呪文を唱えるのと同時に、この言葉をツイートする伝統がある。
2011年に「ラピュタ」が放映された際、「バルス」は毎秒2万5088回ツイートされ、最高記録を達成。
しかし、今年の正月、3万3388回ツイートされた「あけおめ」に記録を塗り替えられた。
そして2日、ツイッターによると、「バルス」は毎秒14万3199回ツイートされ、再度記録を更新した。
ネットを介したコミュニケーションに長けているネチズン(ネット市民)のみならず、アマゾンジャパンや日本ケンタッキー・フライドチキン、シャープといった企業の公式アカウントもこの言葉をツイートした。
「バルス」は滅びの呪文だ。
ヤフージャパンはウェブサイトに「バルス」ボタンを作った。
このボタンをクリックすると、画面が粉々に砕け、スクリーンから崩れ落ちていくように見える。
ちょうど映画で「バルス」の呪文がラピュタの城の崩壊を引き起こすように。
ツイッターによると、日本国外からも投稿があったという。
山 梨県在住の和田英樹さん(32)は
「フェイスブックでバルスをした。
バルス祭りを知ったのはテレビ放映終了後だった」
と話す。
「ジブリの作品の中で、ラピュタは他の作品とは何かが違う、とにかく特別」
だと言う。
ツイッターはJRTに対し、ツイートの総数の割り出しに特別な努力をし、記録的な速さでそれができたことを明かした。
広 報担当の斉藤香氏は
「現地ではすでに夕方だったが、サンフランシスコのサーバー担当者に急ぐようお願いをした」
と述べ、
「やってくれたが、『こういう作業は本来時間がかかるんだ』と言っていた。
アメリカにとっては、これは急ぎの案件では全くないので…」
と笑いながら語った。
記者:Takashi Mochizuki
原文(英語):The Curse of Ghibli—and ‘Balus’ Fans—Strike Again
http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2013/08/05/the-curse-of-ghibli-and-balus-fans-strike-again/
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【気になる-Ⅴ】
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