2013年11月25日月曜日

ロケットの概念変えた「イプシロンの人工知能」 13年の注目技術1位

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新型ロケット「イプシロン」打ち上げ成功。搭載した惑星観測衛星を予定の軌道に乗せた(9月14日)


日本経済新聞 2013/11/25 7:00
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1901S_Z11C13A1000000/

 ロケットの概念変えた「イプシロンの人工知能」 13年の注目技術1位

    光陰矢のごとし――。2013年も残すところわずか1カ月強となったが、今年、社会に大きなインパクトをもたらした技術は何か。
 IT(情報技術)や医療、建設、電気・機械の分野を対象にした雑誌を発行する日経BP社では、専門記者200人が今年注目された300以上の技術を挙げ、その中から4人の審査員[注]がベストテンを選出した。
 2013年のランキング1位には、純国産ロケットの「イプシロンロケットの人工知能」が選ばれた。
 2位には、前走車と衝突の危険性が高まると自動でブレーキをかける自動ブレーキを低価格化した技術が、3位には、予報もなくいきなり発生するゲリラ豪雨を予測する技術が入った。
 本連載では、ベストテンに選ばれた技術をランキング1位から順に振り返っていく。
   
1位:イプシロンの人工知能
2位:自動ブレーキ技術
3位:ゲリラ雷雨予測技術
4位:静かに消すビル解体技術
5位:ロボットスーツ(HAL)
6位:3Dプリンター
7位:直下地下切り替え工法
8位:遠隔がれき撤去技術
9位:IGZO(イグゾー)
10位:Hadoop(ハドゥープ)


[左]写真1 打ち上げ直後のイプシロンロケット
[右]写真2 打ち上げられたイプシロンロケット(写真:いずれもJAXA)

■ロケットの打ち上げを日常的なものに

 イプシロンの狙いは「ロケットの打ち上げをもっと簡単で日常的なものにすること」(森田泰弘プロジェクトマネージャ)である。
 このため、コストダウンや組み立ての簡素化、準備時間の短縮などが図られている。

 打ち上げコストは初号機で50億円程度、2号機以降では38億円で済むという。
 2017年に打ち上げる次期イプシロンでは30億円以下に引き下げる
 これに対し、液体燃料を使う大型ロケット「H2A」の場合、打ち上げに100億円近くかかっていた。

 発射台にロケットを設置してから打ち上げ、後片付けまでの期間はイプシロンの場合、7日であった。
 これに対し、イプシロンより1世代前の小型ロケット「M-V」では42日間かかっていた。

 低コストかつ短時間で打ち上げを成功させる肝となるのが、
 打ち上げ前の点検を自動化する打ち上げ管制システムだ。
 人工知能(AI)機能を組み込んだ、「ROSE(ローズ)」という愛称を持つコンピューターをイプシロンに取り付け、ROSEが電気機器の状況を監視し、地上側のパソコンに伝達するようにした(写真3)。


 何らかの異常を検出した際には、システムが即座に打ち上げを中止する。
 こうした仕組みにより、人為ミスの排除による信頼性向上、点検時間の短縮、管制要員の削減などを実現した。
 2台のノートパソコンだけで打ち上げ管制ができるため、管制室内の要員はM-Vの10分の1で済んだ(写真4)。


■イプシロンと管制システムの可能性

 ただし、今回の初号機の打ち上げでは、点検作業を自動化したがゆえのトラブルに見舞われた。8月27日、発射19秒前に打ち上げを中止したのは打ち上げ管制システムのトラブルが原因だった。

 イプシロンロケットの姿勢を点検した際、イプシロン側のコンピューターからデータが送られてくるよりも、わずかに早く地上側のコンピューターが姿勢チェックの処理をしてしまった。
 その差は0.07秒であったが、地上側のコンピューターは異常を検知したと誤認し、打ち上げを自動停止した。

 しかし、最終的に打ち上げに成功したことで、イプシロンロケットと打ち上げ管制システムの双方について将来の可能性が広がった。

■新興国に採用を働きかけ

 東南アジアを中心に新興国で小型衛星の打ち上げニーズが高まっている。
 日本としては今後、今回の実績をアピールし、新興国にイプシロンの採用を働きかける。

 打ち上げ管制システムはイプシロンだけではなく、将来は再利用可能なシャトルの打ち上げにも活用される。 
 その意味で、イプシロンロケットとその管制システムは日本の宇宙開発のエポックメイキングになる技術である。



NHKニュース 12月25日 4時27分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131225/k10014085401000.html



H3ロケット 2020年に打ち上げ目指す

 日本の基幹ロケット「H2A」に代わる次世代のロケット、「H3」の開発が来年度から始められることになり、文部科学省は、2020年の1号機打ち上げを目指しています。

 12年前に開発された日本の基幹ロケット「H2A」は、これまでに22機が打ち上げられ、成功率は95%を超えていますが、海外の衛星を受注するためにはおよそ100億円というコストの高さが課題でした。

 こうしたことを受け、文部科学省は次世代の基幹ロケット、「H3」を開発することを決め、来年度予算案に70億円を盛り込みました。
 「H3」は、液体燃料を使ったメインエンジンに固体燃料の補助ロケットを組み合わせて飛ばす大型のロケットで、開発費はおよそ1900億円が見込まれています。
 ことし打ち上げに成功したイプシロンの点検技術などを活用することで、打ち上げコストは、H2Aのおよそ半分の50億円から65億円に抑えることを目標としています。
 また、衛星の重さによって打ち上げの能力を変えられるようにし、2トンから6.5トンの衛星をカバーする計画です。
 
 文部科学省は来年度、このH3の開発に着手したあと、
 7年後の2020年に1号機を打ち上げたい、
としています。