2013年3月18日月曜日

南海トラフ巨大地震(1):経済被害220兆円、建物倒壊、企業生産低下






jiji.com (2013/03/18-18:12)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013031800694

経済被害220兆円=建物倒壊、企業生産低下で-南海トラフ巨大地震・内閣府推計

 内閣府は18日、マグニチュード(M)9クラスの南海トラフ巨大地震が発生した場合の経済被害の推計を公表した。
 住宅やオフィスビルなど建物の倒壊や企業の生産活動低下により、被害額は最大220兆3000億円に達す。
 2003年にまとめた被害推計はM8.7で81兆円だったが、東日本大震災を踏まえて最大クラスの地震を想定した結果、2.7倍の規模に見直した。

 内閣府は南海トラフ巨大地震への備えを強化するため、今後取り組む対策を盛り込んだ大綱と、減災目標を示した防災戦略を、13年度中にも策定する方針だ。
 被害の内訳は、地震の揺れと津波に伴う、建物や、上下水道、道路などのインフラ損壊の被害が169兆5000億円。
 東日本大震災の16兆9000億円の10倍に達すると推計した。
 また、労働力減少やサプライチェーン(部品供給網)の寸断によって、企業生産が44兆7000億円低下。
 道路と鉄道の不通による物流停止や、運搬ルートの迂回(うかい)による損失は6兆1000億円と見積もった



NHKニュース 3月19日 5時19分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130319/t10013294311000.html

南海トラフ地震 避難や救援態勢検討へ

 18日に発表された南海トラフ巨大地震の経済被害の想定を受けて、政府は広域にわたる避難や救援態勢の具体的な検討を行うことにしています。
 一方、行政による支援には限りもあることから専門家は家庭での耐震化や備蓄などの対策を進める必要があると指摘しています。

 18日に発表された南海トラフ巨大地震の経済被害想定で、被害額は最悪の場合、国の予算の2倍以上に当たる220兆3000億円に上りました。
 また、ライフラインが途絶えるなどして、避難所や親戚などの家に避難する人の数は地震から1か月後でも880万人と避難が長期化すると想定しました。
 特に道路や鉄道、空港などの交通網が寸断されるため、地震発生直後から数日間は、救助や支援に当たる人員の派遣さえもままならない状態となることが想定されます。
 このため、内閣府は道路を復旧させる方策や物資や救援に当たる人員の派遣計画、それに広域にわたる避難の在り方など具体的な活動計画を平成25年度にまとめることにしています。
 一方、被害が広域で行政の支援にも限界があることから、国は耐震対策や備蓄などの対策を進めることにしています。
 想定をまとめた委員の一人で、防災対策に詳しい名古屋大学の福和伸夫教授は
 「家屋の耐震化と家具の固定ができて、はじめてけがをせずに命を守ることができる。
 そのうえで、災害のあと家族を守るために十分な備蓄をしておくことが重要なことだ」
と話しています。

■交通寸断の想定も

 今回の想定では高速道路や鉄道など交通にも深刻な影響が出るとしています。
 高速道路などは震度6強以上の揺れが想定されるエリアで何らかの被害が出るとして、東名高速道路と新東名高速道路、中央自動車道、本州と四国を結ぶ神戸淡路鳴門自動車道と瀬戸中央自動車道が通行止めになるとしました。
 数日から1週間程度で復旧が進むものの緊急車両が優先され、一般車両が通行できるまでには1か月かかり、物流や経済活動に影響が出ると想定しています。
 鉄道は電柱や架線、線路に被害が出て東海道・山陽新幹線は全線で運転できなくなるとしました。
 このうち、東京駅と静岡県の三島駅の間と、山口県の徳山駅と福岡県の博多駅の間は地震発生当日に点検を終えて運転を再開するとしていますが、全線で運転を再開するまでにはおよそ1か月かかると想定しています。
 JRの在来線と私鉄は震度6弱以上の激しい揺れとなる地域でほぼすべてが運休し、1か月後でも復旧する路線は半分程度としています。
 また、空港は揺れによる被害を点検するため、東海、近畿、中国地方、四国、九州などの空港が閉鎖されます。
 高知空港と宮崎空港は津波とともに漂流物が流れ込んで使用できなくなるほか、中部空港、関西空港、徳島空港、大分空港は一部が浸水するとしています。
 ほとんどの空港は翌日に利用できるようになりますが、高知空港と宮崎空港は土砂やがれきの撤去に3日かかり、復旧後は当面、緊急物資などの輸送が優先されることになります。

■通信にも深刻な影響

 今回の想定では通信にも深刻な影響が出るとしています。
 固定電話は通信設備が揺れによって壊れるだけでなく、停電によって通話ができなくなり、四国をはじめ、大阪府、兵庫県、和歌山県、愛知県、静岡県、三重県などでは通話できない固定電話がおよそ9割に達するとされました。
 3日後に基地局が臨時に設置されるほか、停電も緩和されて通話は一部でできるようになりますが、計画停電のために影響が長期化するおそれがあります。
 また、携帯電話は揺れによって基地局が壊れて電波が止まるのは1割程度で、地震発生直後通話はつながりにくくなりますが、メールを送ったり受けたりすることはできるとしています。
 しかし、停電が長期化すると基地局の非常用電源が切れ、さらに携帯電話の電池も充電できないため、早い段階で使えなくなります。
 内閣府は
 「予備のバッテリーなどを準備することも重要だが、通信機器が使えないことも考えて、いざというときの集合場所や連絡方法をあらかじめ決めておくことが重要だ」
と話しています。



(東京新聞)2013年3月19日 07時13分
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013031990071339.html

南海トラフ 被害220兆円 M9地震 避難950万人
 

 南海トラフで東日本大震災と同じマグニチュード(M)9級の巨大地震が発生すると、関東以西の広い地域で断水や停電が起こり、最悪の場合に九百五十万人が避難し、建物被害や経済活動への影響などで損害は二百二十兆円に上るとの想定を内閣府中央防災会議の作業部会がまとめた。
 揺れと津波を生き抜いた後も厳しい状況が続く。
 政府は新年度、具体的な対策を盛り込んだ大綱などを策定する。

 想定では、地震発生直後に関東、中部、北陸、近畿、四国、中国、九州の各地方で約二千七百十万軒が停電、三千四百四十万人が断水に遭う。
 水や物資が不足するため、一週間後には自治体の避難所に身を寄せたり被災地外に避難したりする人が九百五十万人に膨れ上がると見積もった。
 食料は発生後一週間の合計で九千六百万食が不足する。

 揺れや津波で倒壊する建物や、電気や水道などのインフラ損壊の直接被害は百六十九兆五千億円で、東日本大震災の十倍に上った。
 想定被害の大きいのは愛知県の三十兆七千億円、大阪府の二十四兆円、静岡県の十九兆九千億円の順。首都圏の一都四県では計二兆千五百億円だった。

 また、東海、中京、阪神などの生産拠点が被災して東西の交通も寸断される。
 このため生産やサービスが落ち込み、企業の生産活動への損害は地震発生から一年間で国内総生産(GDP)の一割近い四十四兆七千億円に上ると試算。
 企業生産の損害と一部重複するが、道路や鉄道の寸断による物流停止などの損害が六兆一千億円と推計した。

 南海トラフ地震の被害推計は二〇〇三年にM8・7で八十一兆円とされたが、東日本大震災クラスに規模を見直し、損害額は二・七倍の想定となった。

 内閣府は昨年、南海トラフ巨大地震による津波の高さと死者数の想定を公表。
 今回は東日本大震災の実例を基に地震発生後に生じる問題を分析した。「厳しい数字だが、ありのままを知ってもらい、着実に対策を進める」と狙いを説明する。

 作業部会は今月中にも対策を提言する最終報告をまとめる。
 内閣府はこれを受けて新年度、被害削減の数値目標などを定めた防災戦略や大綱を策定する。

 <南海トラフ> 静岡県東部の駿河湾から九州沖にかけて800キロ以上続く海底の溝(トラフ)。
 このトラフに沿って「東海」「東南海」「南海」の3地震が想定されている。
 内閣府では昨年、3地震が同時発生し、巨大津波を伴う最悪の場合に津波高は最大34メートル、死者は計32万人に上るとの想定を公表した。